【あなたは大丈夫?】家を借りることもできない|高齢者の賃貸住宅問題

本記事を読んでいただきたい方

  • 生涯独身を貫く予定の方
  • 土地や家などを所有しておらず、今後相続等で継承する予定も無い方
  • 資産運用等に興味の無い方
  • 70歳以上で一人暮らしをしている親族のいらっしゃらない方

あなたは、おいくつですか?

あなたに、パートナーはいますか?

お子さんは、おいくつですか?

もしもの時に、頼れる人はいますか?

持ち家は、ありますか?

資産は、ありますか?

あなたは、終の住まいというものについて考えたことはありますか?

先日、古いアパートを取り壊すために、入居者に転居をお願いするという仕事を引き受けました。75歳の男性と、83歳と85歳の女性で、全員一人暮らしでした。退去のお願いについては「大家さんの事情もあるから仕方ない」とご理解いただけたものの、転居先を探すというのがとても大変でした。

最終的には、予定通り、全員にお部屋をご紹介できたので、大家さんは大喜びでしたが、私はなんとも後味の悪い想いをしました。今回は、そんな実体験に基づいて、“終の住まい”についてお話をしようと思います。

某住宅メーカーに20年勤務し、各種分野の経験を積んできた住宅のプロとしてお伝えします。どうぞ最後までおつきあいください。

日本の独居老人

まずはこのデータをご覧ください。

引用元:内閣府 高齢社会白書 2015年版より

一人暮らしの65歳以上の高齢者の数は、1980年には88万人だったのに対し、2010年には479万人に増加、2015年には600万人超え。

また、今から20年後の2040年には、高齢者の40%が一人暮らしになると言われています。

ここで冒頭の問いかけを思い出してください。

そして、全ての文頭に「20年後、」と付け足してみると、下記のようになります。

20年後、あなたは、おいくつですか?

20年後、あなたに、パートナーはいますか?

20年後、お子さんは、おいくつですか?

20年後、もしもの時に、頼れる人はいますか?

20年後、持ち家は、ありますか?

20年後、資産は、ありますか?

20年後のことなどわからないというのが正直なところでしょう。自分だけでなく、家族や近しい人達もその頃どうなっているか、なんてことは誰にもわかりません。だからこそ、これだけは言いたい。

今のうちに、住む場所だけは考えておいた方が良いと。

もしくは資産の準備だけはしておいた方が良いと。

高齢者の住宅事情

先述した3名の方には共通点がありました。

3人の共通点とは?

  • 75歳以上
  • 一人暮らし
  • 賃貸暮らし
  • 潤沢な資産は無く、年金でギリギリの生活
  • 今住んでいるアパートが老朽化のため取り壊しになるので、転居先を探している

住みたいエリアや希望家賃などの条件を確認し、いざ探してみると、予想を軽くぶっちぎるくらいのレベルで厳しい‼︎

大半の大家さんたちは、高齢者お断りなんです。自分のアパートで万が一のことがあったりすると、事故物件扱いされ、資産価値に傷がつくから。

今はそういった“事故”の告知義務もありますし、万一隠そうとしたところで、「大島てる」でカンタンに検索もできますしね(ただし、「大島てる」が絶対でないということだけは言っておきます。事実、掲載されていない物件を知っていますから)。

でも、転居先を探している当のご本人達は、そんなこと考えていないんですね。

今まで借りられていたんだから、次も大丈夫だろう。

あわよくば、今まで住んでいた部屋よりも好条件の部屋に転居したい、とか。

入居を阻む条件としては以下の通り。

賃貸住宅の入居が制限される主な条件

  • 高齢者の一人暮らし
  • 入居者の年齢が70歳以上
  • 連帯保証人(世帯が別で、定職に就いている)がいない
  • 契約者になってくれる親族がいない
  • 年収(年金含む)が300万円以下
  • 預貯金が300万円以下

このうちの全てに当て嵌まるようだと、絶望的と言っても良い状況です。各市町村が運営する市営住宅などに入れれば良いでしょうが、どこもかなりの倍率です。

今回の結末

では、今回の依頼をどのように解決したのか。

以下、ケース毎にまとめます。

Case1. 85歳女性

  • 希望物件は見つかるが、連帯保証人に加えて、契約者も本人以外でという条件を出される
  • 別居している息子(50代)が契約者、その妻(50代)が連帯保証人ということで解決

今回、もっとも簡単に解決できたケースです。

運良く、定職に就いた息子さんが契約者、その奥さんが連帯保証人を買って出てくれたので解決しました。お部屋探しの際には、ご本人よりも息子さんの奥さんが条件にうるさくて少し困りましたけれど。

Case2. 83歳女性

  • 支払える金額はかなり低めだが、住み慣れた現エリアに住み続けたいと希望
  • 希望エリアの賃料相場は他エリアよりも高め
  • 老朽化物件しか選べない
  • 紹介するこちらとしても、気が引けるような物件しかない
  • かろうじて、納得してもらえる物件が見つかる
  • 別居している息子さんが連帯保証人となることで解決

この見つかった物件というのが、築36年にもなる木造アパートで、特に大きなリフォームもしていないため、見た目はボロボロ。

間取りは2Kでしたが、冷蔵庫の置き場も、洗濯機の置き場もキチンと考えられていたとは思えない間取りで、特に洗濯機は、設置すると浴室の出入口付近が狭くなるという酷いものでした。

大家さんも、お金を掛けない代わりに、それでも入ってくれるなら、生活保護受給者でも誰でも良いという考えの持ち主でしたので、アパートの環境は良好とは決して言えませんでした。

引き渡しの際、一緒にお部屋に入って鍵を渡したとき、陽も差さないような部屋の中で、それでも笑顔で「ありがとう」と言われた時、涙が出そうになりました。

一生懸命生きてきた人の終の住まいがこれかと、怒りにも似た感情が湧いたことは、今でも決して忘れません。

Case3. 75歳男性

  • 生涯独身だったため、頼れる人はご兄弟だけ
  • そのご兄弟も全員76歳以上のため、連帯保証人として認められない(70歳以下と言われることがほとんど)
  • 年金収入額は結構あったので、そこを認めてもらい、某大手賃貸住宅メーカーの高齢者見守りサービス(定期的に電話連絡あり。通じないと自宅へ訪問)に加入することで解決

Case1、2と比べると、圧倒的に高額の年金収入があったのですが、生涯独身を貫いていたために連帯保証人や、契約者を別で立てることができず、一番苦労しました。

最終的には、某大手賃貸住宅メーカーの有料サービスに加入することで了解を得られましたが、こういうところで、独身者の不遇を痛感しました。

今のうちから準備

昔と違い、今は様々な生き方を選ぶことができる時代です。

しかし、そうではなかった時代と比べても、制度や、人の感覚といったものは、それほど大きく変わっていないように思います。

家は絶対に買ったほうが良い、とは言いません。

結婚は絶対にしたほうが良い、とも言いません。

ですが、老後にはこんな問題も待っているのだと理解して生きていくことは必要だと、今回の件で痛感しました。

もしも今現在、何の準備もしていないという方には、不動産投資という手段もあります。カンタンではありませんが、例えば中古アパートや中古マンション(1部屋ではなく1棟)を購入して、その1室をご自身の住まいにしているオーナーもいらっしゃいます。

最近は「70歳以上の方には販売しない」という分譲マンションもあるほど、高齢者の方にとっては大変な高齢社会になっていることだけは、ご理解ください。幸せな老後が待っているかどうかはわかりませんが、どうか住むところには困らない程度の準備だけはお忘れなきよう・・・。

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

住宅メーカー勤務。不動産で「絶対に失敗したくない」人に向けた情報を発信/ 所有資格: 宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・管理業務主任者他
※当サイトはアフィリエイトに参加しています。

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