【家づくりを失敗したくない方へ】「家事動線」を知らずに、理想の間取りは作れない

一生に何度もできない経験というものがあります。

「家づくり」もその一つではないでしょうか?

”ローコスト住宅”と呼ばれるものもありますが、それにしても1,000万円程度のお金は必要となります。比較対象があれば、相対的には「安い」と感じるかもしれませんが、絶対的に考えれば、1,000万円という金額は決して安くないでしょう。購入した後で失敗したと思っても、簡単に売却することもできませんし。

あたりまえですが、家づくりは一か八かでするものではないのです。是が非でも失敗しないように、慎重に慎重を重ねて計画を進めるべきものです。家を建てる理由は人それぞれですが、せっかく建てる家なら、使いやすい家である方が良いに決まっています。

では「家の使いやすさ」とは、どこで決まるのでしょうか?

部屋の広さや収納量などは当然大切な要素です。しかしそれらは、使いやすさというよりは、快適性に繋がる要素です。

ですから「使いやすさ」とは「動きやすさ」ではないかと私は考えます。

家中をストレスなく移動できること。特に、毎日の家事においては「ちょっと気になる」程度のことでも積み重なって大きな不満となるので、事前に細かくチェックしておきたいものです。

マイホームとは、大抵の方にとって一生に一度の買い物であり、金額的にも最大級のものですから、後悔するほど切ないことはありません。

私は某大手住宅メーカーで、過去に1,000を超える間取りをクリエイトしてきました。その中には、我ながら満足のいくものもあれば、残念ながら、もっとこうしておけばと歯噛みするものもあります。

そこで今回は、私が間取りを考える際に注意している「間取りを作る前に検証しておくべき家事動線」について解説します。

これをお読みになったあなたの家づくりがうまくいくことを心から願っています。どうぞ最後までお付き合いください。

目次

「家事動線」とは?

家事の際に人が動く経路のことを「家事動線」と言います。

この「家事動線」の良し悪しが、毎日の家事のストレスを左右すると言っても過言ではありません。「家事動線」が悪い家は、「家事が楽でない」と感じる家だと言い換えて差し支えないと思います。

何故なら、「家事が楽でない」と感じる間取りとは、主に以下の要素を備えたものであるからです。

  • 動きづらい
  • 目的地への移動距離が長い
  • 欲しいものが欲しい場所にない
  • (小さなお子さんのいらっしゃるご家庭なら)家事をする際、子どもの様子がわからない

これらは全て「家事動線」に関することです。

モノの置き場や、子供の様子がわからなくなる、なんて「家事動線」は関係ないだろうと思う方もいらっしゃるでしょう。

しかし、人の動きを考えるということは、必要な場所に必要なものを配置することもひっくるめてです。道路をつくる際、交通量の多そうな交差点には信号機を設置しようとか、見づらい場所にはカーブミラーを設置しようと計画するのと一緒です。道だけはキレイにつくっておきますから、あとはご自由に、といった無責任な態度では事故だらけになってしまいます。

そして、こうした家事動線の良し悪しを語るには、検証するべき家事動線が何なのかを知っておく必要があります。

検証するべき家事動線とは?

「検証するべき家事動線」とは、「頻度の高い家事動線」のことです。まずはここを洗い出さなければ、そもそも検証することができません。

検証するべき家事動線とは?

  • 買ってきた食材をキッチンや食品庫へと運ぶ動線
  • ゴミ出しの動線
  • 食事をつくる際のキッチン内の動線
  • キッチン、洗面所、浴室、トイレ間の動線
  • 洗濯機から物干し場への動線
  • お掃除の動線

買ってきた食材を運ぶ動線

「買ってきた食材を運ぶ動線」とは、玄関からキッチン、もしくは食品庫へと運び込む際の動線を指します。

肉や魚、野菜に冷凍食品、牛乳、缶詰、酒類などの食料品をキッチンや食品庫まで運び込むのは、なかなかの重労働です。

ご家庭によって買い出しのタイミングはまちまちだと思いますが、1週間分をまとめて購入するご家庭では、家族構成によっては、結構とんでもない量の食材が必要になるのではないでしょうか。

我が家は3人家族ですが、それでも結構な量の荷物です。

これらをすんなり運びこめる工夫をする(キッチンと玄関の位置を近づける、玄関からキッチンまでの間に食品庫がある等)だけで、家事のストレスは激減します。

この際、一番気をつけなければならないのは、陽当たり対策のために2階や3階にLDKを設置しようと考えた場合です。当然ながら陽当たりも重要な要素ですので、こういった場合には、ホームエレベーターを設置するといったことも考慮したほうが良いかもしれません。

ゴミ出しの動線

食材を運び込む動線の逆、と考えても良いかと思います。それは、家庭ゴミの大半がLDKで出るもので、ゴミの日までの保管も同様の場所でやるものだと考えられるからです。

しかし、食材を運び込みやすい家は、ゴミ出しもしやすいとは言えません。ゴミの保管場所をキチンと設置できるかどうかが非常に大きな要素だからです。

我が家は賃貸なので、キッチン奥の突き当たりとなる冷蔵庫の前にしかゴミ箱が置けないような間取りになっているため、ガスコンロ下の扉を開閉する際には、一度ゴミ箱をずらさなければならないという面倒があります。

また、設備面でのお話になりますが、生ゴミの処理についてもキチンと考えておくべきです。

今はディスポーザーなどもあるので、非常に手軽に生ゴミの処理が可能ですが、建ててから「やっぱり採用したい」と思っても費用もかかるし意外と面倒です。手軽に使えるものを後で購入することもできますが、それを知っていてあとで購入するのと、知らずに仕方なく採用するのでは、気持ちの面でまるで違うはずですから。

食事をつくる際のキッチン内の動線

「ワークトライアングル」という言葉をご存知ですか?

これは、キッチンのシンク、コンロ、冷蔵庫手前の中心部を頂点とした三角形のことで、調理動線を分析する際に重要な要素。

この3辺の距離の合計が3.6〜6.6mが適当とされています。長すぎると動きにムダが多くなるというのは理解しやすいですが、短すぎると調理や配膳に支障がある(シンクとコンロが近いということは、調理や配膳のスペースが足りないということ等)だけでなく、収納などのスペースが不足しているとも考えられるので、注意が必要です。

また、先述した「食品庫」を設置する場合には、キッチンと食品庫との距離も重要です。

キッチン、洗面所、浴室、トイレ間の動線

水回りのお掃除は、まとめてやってしまうということが多いのではないでしょうか。同じ水仕事ですしね。

それ以外でも、お子さんが小さいご家庭では、何かと水回りから水回りへの移動というのは多いと思います(キッチンで食事の準備をしている時に、お子さんのトイレに付き合う等)。

要するに、水回りが位置的にまとまった間取りになっていて、かつ、洗剤など必要なものがすぐに手の届くところに収納できるようになっているか、というのが大事。トイレについては、替えのトイレットペーパーなどがトイレ内、もしくはそのすぐ近くに収納できるかというのも重要。小さなお子さんがいらっしゃるご家庭では、お風呂に入れたお子さんの着替えを洗面所に常備できるか?といったことも地味ですが重要でしょう。

洗濯機から物干し場への動線

マンションや平屋ではほとんど関係ないのですが、2階建以上になるとよくあるのが、1階に洗濯機、2階のバルコニーで物干しというパターン。

一見、当たり前なのですが、濡れた洗濯物を持って階段を上るというのはかなりの重労働です。

1階にある程度の広さの庭があれば、サンルームを設置する方法もありますが、そこまでのスペースが確保できない場合には、1階に物干し部屋をつくるとか、ホームエレベーターを設置するというのもひとつの方法。もしくは、思い切って2階に水回りを設置するという手もあります。その場合、キッチンが1階にあると、また別の問題が発生するので、できればLDKも2階に設置することが望ましいとは思います。

お掃除の動線

掃除機を使う動線です。

これはコンセントの配置計画と言い換えても構いません。

掃除機を使う際に、必要となるコンセントが適所に設置されているかどうか。また、コードレスタイプの掃除機なら、掃除機の収納内に忘れずにコンセントを計画しておくこと。

ルンバのようなお掃除ロボットを使用予定なら、その設置(充電)場所もコンセント込みで計画しておくべきです。

むしろこれからのことを考えると、例え今はコードのある普通の掃除機しか使っていないとしても、いつかコードレス、もしくはお掃除ロボットを使うことがあり得るという前提で計画しておくべきです。

一般的でなくとも、「自分には必要な動線」も検討

ここまでは一般的に、どんなご家庭でも思い当たるであろう「家事動線」について解説してきましたが、一般的でなくとも、あなたには必要な「家事動線」というものもあるかもしれません。

例えば室内犬を飼っているようなご家庭なら、毎朝散歩に行ったあと、犬の足を洗ってから玄関に入る、という動線もあるでしょう。そうなれば、足洗い場をどこに設置するかというのも大きな問題になると思います。

このように、少なくとも家を建てるとか、建て替える際には、今の生活スタイルはもちろん最重要ですが、建てたあとの生活をできるだけ詳しく想像してみてください。

そうして、今はやっていないけど、これは必ず実現したいと思うもの(ガーデニングにチャレンジしてみたいとか、先述したようにペットの飼育をしたいとか)があれば、それに必要なモノや動き方を考えてみてください。

もちろん、実際にやってみて初めてわかることはありますので、いきなり100%自分好みの間取りを想像できるかといえば、できないと思いますが、そんな時こそプロの出番です。経験豊富な建築士さんにあなたの希望を伝えれば、何かしらのアドバイスはもらえるはずですから。

ただし、どんなに信頼できる建築士さんであっても、丸投げは厳禁です。

実際に住むあなたとご家族でしかジャッジできないことは意外に多いもの。最後の責任は、全て施主のあなたが負わなくてはなりません。

初めての経験となる家づくりの現場で、施主のあなたが建築士さんたちをリードすることは無理だと思いますが、ひとつひとつを丁寧に確認しながら進めていくことは可能です。

建築士さんにおんぶに抱っこではなく、二人三脚で理想の家をお建てください。

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

住宅メーカー勤務。不動産で「絶対に失敗したくない」人に向けた情報を発信/ 所有資格: 宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・管理業務主任者他
※当サイトはアフィリエイトに参加しています。

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