【クルマ・バイク好き必見】愛車を眺めて過ごすガレージハウスをリノベーション

本記事を読んで欲しい方

  • ガレージのある家に憧れている方
  • 愛車を眺めて暮らしたいとお考えの方
  • ガレージのある家のリノベーションをお考えの方

ガレージのある家で、毎日愛車を眺めて過ごせる…そんなクルマ好き、バイク好きには堪らない間取りについて考察してみたいと考えています。

某住宅メーカーで1,000の間取りをクリエイトしてきた住宅のプロとして、詳細に解説していきます。

目次

日本のクルマ、バイク事情

一般財団法人 自動車検査登録情報協会によれば、令和元年10月末時点における日本の自動車保有台数は82,330,903台。

また、一般財団法人 日本自動車工業会によれば、2018年3月末時点における日本の二輪車保有台数は10,730,337台となっています。

総務省統計局が公表している、令和2年4月1日時点における日本の人口が1億2596万人ですから、実に国民の65%がクルマを所有し、8.5%がバイクを所有しているという計算になります。

あなたはクルマ、もしくはバイクを所有していますか?

所有しているあなたにとって、それらはどのような存在ですか?

日常生活を送るために必須、もしくは便利な道具?

それとも大切な相棒?

特に、単なる道具以上の愛着を持っている方なら、常にキレイに、少しでも良い状態で保管してあげたいという思いは格別でしょう。

ガレージハウス

愛車を風雨や紫外線などから守り、場合によってはそこでメンテナンスなどもこなせる場所、ガレージ。そのガレージのある家を“ガレージハウス”などと呼ぶこともあります。何のひねりもありませんが、むしろこの分かりやすさが良いのかもしれません。そもそも建築用語には、一般の方にはわかりづらい言葉も多いですから。

ただし、このガレージハウスにも当然ながら、メリットだけでなくデメリットがあります。まずはそれらをキチンと理解しておきましょう。

ガレージハウスのメリット

ガレージハウスのメリット

  • 愛車を風雨や紫外線から守ることができる
  • 愛車の防犯性を高めることができる(シャッターが必要)
  • 悪天候でも濡れずにクルマへの乗り降りができる
  • 間取りによっては、愛車を眺めて過ごすことができる

ガレージハウスのデメリット

ガレージハウスのデメリット

  • 1階の居住面積が、ガレージに割り振った分、狭くなる
  • 道路の向きや敷地形状によっては、ガレージ奥の居室の日照条件が悪くなる
  • 排気ガスの心配があるため、換気設備や窓などが必要
  • シャッターや照明器具などが必要となるため、コストがかかる
  • ガレージのサイズによって、将来買い替えるクルマが限定される

デメリットについて、少し詳しく解説します。

「居住面積が、ガレージに割り振った分、狭くなる」

敷地面積に余裕が無く、ご家族に高齢者や介護が必要な方がいらっしゃる場合に、居室を2階以上にしなければならないというのは大きなデメリットになるのではないでしょうか。

ホームエレベーターを設置することで、そのデメリットは解消できるでしょうが、毎年のメンテナンス費用は結構バカになりません。メンテナンスの内容に加え、メーカーやエレベーターのサイズ、建物の階数などでも差はあるかもしれませんが、2階建住宅で年間6万円程度かかるケースもありました。

「道路の向きや敷地形状によってはガレージ奥の居室の日照条件が悪くなる」

ガレージ奥に居室がない場合や、南向き以外の敷地は、さほど影響はないかもしれません。

ただし、南向き以外は南側隣地の状況によっては、そもそも光が入らないということはあり得ます。

「排気ガスの心配があるため、換気設備や窓などが必要」

ガレージの奥に玄関や居室がない場合であっても、換気設備や窓は必要です。

換気だけでなく、採光もできる窓を設けるのがお奨めですが、大きな窓では、そこから侵入されるリスクもありますので、スリット状の窓にするなど防犯面にも気を配りたいものです。

参照元:YKK AP

「シャッターや照明器具などが必要」

シャッターは必須ではありませんが、犯罪や風雨、紫外線などから愛車を守ることを前提とすれば、設置した方が良いことは間違いありません。

また、照明器具は単なる車庫なのか、そこで愛車のメンテナンスもするのかという前提によって、必要となる明るさが違ってきますので、特に新築の場合は、したいことをハッキリさせたうえでプランニングを進めることが必要です。

普段、シャッターなどで完全に外部と遮断する前提で、今はわからないけど、将来的には愛車のメンテナンスもしたいとか、レトロカーを手に入れてレストアしたいといった希望がある場合には、照明にもこだわりたいもの。

ある程度、位置を移動できるような照明器具にしておくと作業の場所によって手元を照らせるので便利です。

参照元:オーデリック株式会社 “ライティングダクトレール”

「将来、買い替えるクルマが限定される」

新築の場合、ある程度の広さを初めから確保しておかないと、将来クルマを買い替える際に、希望のクルマがガレージ内に収まらないということが考えられます。

安全基準やデザインなどにより、現代のクルマはモデルチェンジの度に大型化する傾向にあります。

また、昨今人気のSUVやファミリー向けとして人気の高いワンボックスタイプなど、クルマの長さと幅は大丈夫でも、高さが足りないため、ガレージに収まらないといったケースも見受けられます。

一方で、レトロカーを一生大切にする、もうこれしか乗らないという覚悟で、そのクルマ限定のスペースを確保する、なんてマニアな方もいらっしゃいました(ちなみにこの方の愛車は昔のミニクーパー)。

今回の提案

『愛車を眺めて過ごせるガレージハウス』

新築とは違い、中古住宅の購入は金額面でのメリットを除けば、中々にハードルの高いところがあります。

特に、ガレージハウスのような特殊なものは尚更です。

憧れのガレージハウスを手に入れようと思って物件を探しても、現状だけ見て、理想と違うと諦めてしまうことも多いのではないでしょうか。

そんな時こそ、リノベーションの出番です。

現状では理想と全然違う間取りでも、リノベーションによって、その理想に近づけることは可能です(もちろん、別途リノベーション費用は必要ですが)。

今回は、日常生活に問題を抱えた中古のガレージハウスを、機能的で、愛車を眺めて過ごせる素敵なガレージハウスへとリノベーションしてみます。

今回のベースプラン

間取りと広さ

築64年の2階建木造住宅。

間取りは4LDKのガレージハウス。

床面積は、130㎡(39坪 ※いずれも小数点以下切り捨て ガレージ含まず)

ベースプランの特徴

間取図から読み取れる、ベースプランの特徴を図面状に書き込んでみます。

1階
2階

以下、もう少し詳細に解説してみます。

ベースプランのメリット

奥行は不足気味ですが、普通車2台を並べてもゆとりのある幅を持たせたガレージと、2階には充分な広さのある洋間が4部屋もありますので、お子さんが多いご家族でも検討しやすいのはメリットです。

決して広くはないですが、2階に物干場が設けられていることもメリットと言って良いでしょう。

ベースプランのデメリット

玄関

図面のミスなのかも知れませんが、玄関収納の記載がありません。

とはいえ、もしも玄関収納があったとはいえ、この窓ばかりの玄関では、カウンタータイプの下駄箱を設置するくらいのことしかできません。

家族で住むには、圧倒的に収納不足です。

LDK

家族が集うLDKですが、気になる点が山積しています。

まずは、南側にガレージのある間取りのため、LDKへの日照がほとんど期待できません。

家中で一番暗い場所と言ってもいいかもしれません。

また、ガレージに面しているため、排気ガスの影響もあり、晴れた日だから窓を開けて気持ちの良い陽光や風を採り込みたい、といったことはできそうにありません。

窓を開けた瞬間、排気ガスの匂いや、タイヤのゴムの匂いなどが室内に流れ込んでくるイメージです。

また、キッチンのガスコンロの所には、変なカタチの壁が設けられており、使い勝手が悪そうです。

さらに、TVの置き場が見当たりません。

水廻りと隣接しているのは使い勝手が良さそうですが、それ以外の点では、ほとんど良い点が見当たりません。

洗面所

洗面所は、広さは充分ですが、洗濯かごやタオル類等の備品を置くスペースが不足しています。

2階廊下

2階廊下は、無駄に広さがあります。

このスペースのいくらかを、居室や物干場等に振り分けられたら、もっと機能的になる気がします。

洋間収納

上図の2階洋間における収納面積は、各部屋1.5畳ずつ確保されており、収納量としては充分なのですが、コストダウンを図ったのか、扉が1畳分しか開かない設計になっています。

これでは、壁の奥になっている箇所のモノの出し入れがしづらいため、キチンと使いやすく改良したいものです。

歪な形状の洋間

何故、こんな形にしたのかなってくらい、不可解な形の洋間。

図面上では出入口の左側にある縦に並んだ3コマを収納にしてしまえば、真四角の使いやすい8畳の洋間にできたのにと思ってしまいます。

陽当たりの良い個室

個室の陽当たりが良いことはもちろん好ましいことですが、家の中で一番陽当たりの良い場所が個室というのはどうなのか?ということです。

先述した通り、家族が集まるLDKは家の中で最も薄暗い場所なのです。

収納不足

理想的と言われる収納量は、床面積に対して15%前後ですが、このベースプランでは、10.19%に止まっています。

収納量自体はそれなりに確保されていますが、そのほとんどが個室だけに用意されており、適材適所とはいえない状況です。

リノベーション後の新プラン

下書き

先述した不満点を解消するべく、アウトラインをざっくりと描いてみます。

今回のリノベーションのポイントは以下の通り。

Point

  • 玄関の収納量増
  • LDKを陽当たりの良い場所に移動
  • LDKにTVを置けるスペースを
  • 室内から愛車を眺められるようなスペースを
  • 洗面所に洗濯かごやタオルなどの備品を納められるスペースを
  • 全体的に収納量を増加

Before & After

完成図をリプランニング前後で比較してみます。

リプランニングのポイント

リプランニングのポイントを書き込んでみます。

まずは1階から。

まずは玄関。

引き違いの扉を防犯性も気密性も高いドアに変えて、収納のまるで無い空間でしたが、窓を一面潰した片側一面を収納に変更しました。

玄関ホールも奥行きのある空間に変更しました。

次にトイレの位置を階段下に移動。

以前の間取りでは、トイレに行くためだけに存在していた廊下を、トイレだけでなく、洗面所や浴室に行くためにも使えるようにしました。

洗面所には備品用のスペースを設けました。

そして、今回のリノベーション一番のキモとなる部分、“愛車を眺められるスペース”というのを、LDKから寝室に変更しました。

部屋の用途としても、殊更に陽当たりを求める必要はなく、薄暗いガレージ内で、ライトアップされた愛車を眺められるスペースとして、寝室は最適であると判断しました(このベースプランにおいては、という条件付きです)。

問題点とすれば、クルマ好きな仲間を集めて楽しむには向かないということでしょうか。

なお、寝室には、夫婦それぞれのクローゼットと、ベッドの近くに、奥行の浅い収納を設けました。

図のように、書棚にしてしまえば、クルマ関係の雑誌やカタログなどをズラッと並べておくことも可能です。

続いて2階です。

2階で最も大きな変更点は、陽当たりの良い場所にLDKを移設したことです。

ベースプランよりも格段に広く、明るくなり、TVの置き場と家事コーナーまで設けることができました。

他には、無駄な廊下を削りました。

また、各部屋の収納も、中途半端に残してあった隅っこの使いづらい壁を取り払い、端までしっかり使いやすい収納としました。

全体の収納率も14.33%まで改善されました。

唯一の問題点としては、ベースプランよりも1部屋減ったことです。

お子さんが3人いらっしゃるとか、ご夫婦が寝室を分けて、お子さんが2人といったご家族にはマッチしないということです。

まとめ

クルマやバイクが憧れの対象だった時代から、少なくともクルマは趣味のものから実用的なものへとシフトし、最近では所有せずともシェアできる、そんな時代になりました。

だからなのか、以前より、クルマやバイクが熱狂的に好きだという方は少なくなったように感じますし、ネットが主流になった今、クルマ関係の雑誌なども減ったイメージがあります。

しかし、そんな今でもクルマやバイクを根強く愛する人たちはいるわけで、そういった人たちがいる限り、こういったガレージハウスというのも根強く需要があるわけです。

住宅というのはマスだけで捉えることができないというのが面白いところです。

世の中にある大抵の物は、トレンドによって生まれたり消えたりするわけですが、施主とつくり上げる住まいの場合は、どんなにマイナーな好みであっても、流行ってないからつくれないとは言えないのです。

新築に限らず、リノベーションでも、そういったマニアックなお好みに応えられる住まいをつくり上げることは可能です。

せっかくの家づくりですから、可能な限りトコトン好きな要素を詰め込んでみることをオススメします。

最後に、ガレージハウスを建てたいとお考えの方へ。

建築は“引き出し“が重要です。

自分の中から、急にみたこともない新しいアイデアは滅多に出てきません。

どれだけの情報をインプットできたかで、アウトプットできる情報の質も量も違ってきます。

だからこそ、「ガレージハウス欲しいなあ」とぼんやり夢想するのではなく、より具体的なアイデアを蓄積していくことが重要です。

そのためにも、まずは様々な実例に目を通してみるのがオススメです。

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

住宅メーカー勤務。不動産で「絶対に失敗したくない」人に向けた情報を発信/ 所有資格: 宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・管理業務主任者他
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