【15年後、後悔しないために】屋根形状10種類 それぞれのメリット、デメリット

憧れのマイホーム。

これから始めたい不動産経営。

新築の場合は特に、外観も気になるものです。窓の位置や外壁なども大切ですが、やはり屋根の形が家の外観にもたらす違いは見過ごせません。

とは言え、単純に見た目だけで決めてしまうと、コストやメンテナンスの面で大きな問題が生じることもあります。本記事では、これから新築をお考えのあなたが、屋根の件で将来後悔しないよう、屋根の形状とそれぞれのメリット、デメリットをご紹介します。

本記事の内容

  • 屋根の種類(全14種類)とそれぞれのメリット、デメリットがわかる
  • 新築をご検討中の方が好みの外観を作るためのヒント
  • 購入後のメンテナンス費用などを予想

10種類の屋根形状 それぞれのメリット、デメリット

ここから主要な屋根形状についてご説明します。細かく書くとキリがないので、わかりやすい項目だけざっくりと書いています。

切妻(きりづま)屋根

屋根の頂部から二つの傾斜面が地上に向かって流れ落ちる、本を伏せたようなシンプルな形状です。

メリット

  • シンプルゆえ、防水処理の欠陥によるトラブルが発生しにくい
  • 新築時の工事費が安い
  • メンテナンスの難易度も低めで、工事費も抑えることが可能
  • ロフトなど、屋根裏の空間の有効利用もしやすい形状
  • 太陽光パネルを設置しやすい
  • 隣地側に傾斜面を向けないように設計することで、隣地への落雪を防ぐことが可能(下図参照)
切妻屋根を利用して、隣地への落雪を防ぐ方法

デメリット

  • 妻側(つまがわ:屋根がかかっていない面)の外壁は、風雨や紫外線の影響が大きいため、劣化しやすく、定期的な点検、メンテナンスが必要
  • 建物を上から見た形状がシンプルな四角形だと、外観はチープに見える(特に平屋の場合)

片流れ屋根

屋根面が一枚だけという、切妻屋根よりもシンプルな形状です。

メリット

  • シンプルな形状で、防水上の欠陥も少ない
  • コストダウンできる(屋根面のみ)
  • 太陽光パネルを設置しやすい
  • ロフトや吹き抜けなど屋根裏の空間を確保しやすい形状(下図参照)

デメリット

  • 外壁工事のコストアップ(外壁面積が増えるため)
  • 屋根がかかっていない側の外壁は、風雨や日光の影響で劣化しやすいため、定期的な点検が必要
  • 一面に雨が集中してしまうため、大雨の際などに、一つしかない雨樋から雨水が溢れてしまうリスク高い(下図参照)
  • 建物を上から見た形状がシンプルな四角形だと、外観はチープに見える(まるで倉庫のよう)

寄棟(よせむね)屋根

4つの傾斜面で構成されている屋根のことで、屋根の頂部に、「大棟(おおむね)」という部分があります。

メリット

  • 4方向から支え合うつくりのため、耐風性が高い
  • 切妻や片流れよりもカバーする外壁面積が大きいので、風雨や紫外線の影響を受けづらい
  • 建物を上から見た形状がシンプルな四角形でも、それなりに見える

デメリット

  • 形状が複雑になるため、雨漏りのリスクが高い
  • 太陽光パネルは設置しづらい
  • メンテナンス費用が高い
  • 屋根裏空間で有効活用できる部分は限定される(下図参照)

方形(ほうぎょう)屋根

4つの傾斜面が等しい長さで頂点を結ぶ、ピラミッドのような形状の屋根のことです。

メリット

  • 寄棟屋根同様、4方向から支え合うつくりのため、耐風性に優れる

デメリット

  • 接合部が多く、雨漏りのリスクが高い
  • 全ての屋根面が三角形であるため、太陽光パネルの設置には不利

入母屋(いりもや)屋根

寄棟と切妻を組み合わせたようなデザインの屋根で、上部が切妻で下部が寄棟となったような形状です。

メリット

  • 屋根裏の断熱性や通気性が高い
  • 耐風性が高い
  • 雨水の水はけも良い

デメリット

  • 接合部分が多く屋根の形が複雑になるので、工事費が高額
  • メンテナンス費も高額
  • その複雑さゆえに、雨漏りのリスクも高い
  • 太陽光パネルの設置は可能だが、屋根の向きや間取りによって制限される

陸(ろく)屋根

傾斜面ではなく、平らに仕上げた屋根のことです。

メリット

  • 屋上スペースを有効活用することが出来る
  • 風による影響が少ない
  • 太陽光パネルの設置にも有利(ただしデメリットもあるので、それは次項で)。

デメリット

  • 傾斜がほとんどない構造上、水が流れづらく溜まってしまいがち
  • 排水口にゴミや落ち葉が溜まったりすると、一気に雨漏りのリスクが高まる
  • 防水工事が高額
  • メンテナンス工事が高額
  • 太陽光パネルを設置する際は、角度をつけなくてはならないため追加費用がかかる

補足しますと、実務経験上、この陸屋根が最もトラブルが多いように思います。

理由はカンタンで、デメリットに書いたように屋根の上から雨水や雪が落ちづらいため、他の屋根形状に比べて、屋根上が常に濡れた状態になりがちです。建物を傷める主な原因のひとつである水(もう一つは“紫外線”)と常に隣り合わせという状況が、建物に良くない影響を与えることはお分かりいただけるはずです。

また、屋根がないことで、外壁に日光が当たりやすくなるため、外壁の傷みも他の屋根形状の建物よりも早いです。陸屋根をどうしても採用したい、という場合は、外壁をタイルにするなど、少しお金をかけてでも傷みにくい素材にすることをオススメします。

はかま腰屋根

切妻屋根の妻側に、屋根上部から少しだけ寄棟屋根のような屋根面を設けた屋根のことです。半切妻、隅切り、ドイツ屋根などとも言われます。

メリット

  • 道路斜線や日影規制など法規制をクリアしやすい
  • 室内空間を確保することが可能
  • 太陽光パネルも設置しやすい

デメリット

  • 切妻屋根よりも少し複雑であるため、雨漏りのリスクが高い

招き屋根

切妻屋根の片側の屋根を長く、もう一方を短くした屋根のことです。

メリット

  • 耐風性が高い
  • 断熱性が高い
  • 通気性が高い
  • 施工費が安い
  • 太陽光パネルの設置にも有利

デメリット

  • 屋根の取り合い部分は雨漏りのリスクが高い

越屋根

採光や通気を良くするため、屋根の上にさらに小さな屋根を乗せた形状の屋根です。

メリット

  • 高い位置に開口部を設けることができるため、熱気を抜きやすく、通気を良くできる
  • 採光も良くできる
  • 太陽光パネルの設置は可能だが、屋根の向きによっては制限される場合もある

デメリット

  • 構造が複雑なため、雨漏りのリスクが非常に高い
  • 定期的なメンテナンス推奨のため、メンテナンスコストが高い

バタフライ屋根

蝶が羽を広げたような形で、V字型の形状の屋根です。

メリット

  • 雪国では、中心部のくぼんだ箇所に「スノーダクト」を設置することにより、融雪・排水できる無落雪屋根にもできる
  • スノーダクト式無落雪屋根は、雪下ろしの際の転落事故を防げる
  • あまり一般的ではない屋根形状なので、個性的な演出ができる

デメリット

  • 谷の部分に水が溜まりやすい形状のため、排水が溢れてしまう恐れがあり、屋根材や樋が傷みやすい
  • スノーダクト式無落雪屋根にする場合、耐雪強度をキチンと確保しておかないと、屋根の陥没や、建具が開かなくなるといったトラブルが起こりうる
  • 太陽光パネルの設置には不向き

その他

上述した10種類に加え、下図のようなものもありますが、いずれも現在、住宅用としては、あまり一般的ではないので、ここでは割愛します。

2段階で屋根勾配を変える切妻「ギャンブレル屋根」(左上)

2段階で屋根勾配を変える寄棟の「マンサード屋根」(右上)

工場などで見受けられる「鋸(のこぎり)屋根」(左下)

名前の通りR型の「かまぼこ屋根」(右下)

【まとめ】屋根形状毎のデメリットと太陽光パネルの対応について

屋根形状デメリット太陽光パネルの対応
切妻屋根屋根のかからない妻側の外壁が傷みやすい設置しやすい
片流れ屋根一箇所の雨樋に雨水が集中するため、大雨の際は溢れることも設置しやすい
寄棟屋根メンテナンス費用は高く、雨漏りのリスクも高い設置しづらい
方形屋根メンテナンス費用は高く、雨漏りのリスクも高い設置しづらい
入母屋屋根工事費、メンテナンス費は高額可能だが、屋根の向きなどで制限される場合もある
陸屋根雨漏りのリスクが非常に高く、コストがかかる問題ないが、角度をつけて設置するための追加工事が必要
はかま腰屋根ベースの切妻屋根より複雑な分、雨漏りのリスクが高い設置しやすい
招き屋根屋根の取り合い部分は雨漏りのリスクが高い設置しやすい
越屋根構造が複雑で雨漏りのリスクが高い可能だが、屋根の向きなどで制限される場合もある
バタフライ屋根谷部分に水が溜まりやすく、屋根材や樋が傷みやすい不向き
屋根形状まとめ

Point

個性的な外観にこだわり過ぎると、メンテナンス費用が高くつきます。

メンテナンス費用と外観へのこだわりは、常に天秤にかけて考えるといいでしょう。

ただし、投資用物件なら、できるだけメンテナンス費用がかからないことを優先するべきだと思います。

まとめ

屋根は、建物の外観上、大きなポイントとなるだけでなく、風雨や日照などから住まいを守ってくれる大切な部位です。カッコ良さはもちろん大事ですが、雨漏りなどのトラブルが頻発するようでは困りものです。同じ間取りの家であっても、屋根形状が違うというだけで、将来のメンテナンス費用が数十万円単位で変わることだってあります。

また、安易に決めてしまったことで、後年、太陽光発電を設置したいと思っても、「できない」と言われることだってあるのです。中古住宅だって、同様のことが起こり得るのですから、やはり屋根についてしっかり考えること、知っておくことは重要です。

ですから、中古を購入する場合には、必ずリフォーム履歴の有無とメンテナンスにどの程度の費用が必要かについてリサーチしておくべきですし、新築ならば、屋根の形や素材にまでこだわっておくべきだと思います。

安易にカッコいいといった理由で、屋根形状や屋根材を選ぶと、20年ほど後に、思いもよらない出費のリスクがあるのですから要注意です。慎重に先々のメンテナンスまで考慮して計画を進めてください。

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

住宅メーカー勤務。不動産で「絶対に失敗したくない」人に向けた情報を発信/ 所有資格: 宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・管理業務主任者他
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