夫婦別寝室で快適に過ごせる平屋建住宅へリノベーション

本記事を読んで欲しい方

  1. 平屋のリノベーションをお考えの方
  2. 「寝ても疲れがとれない」その原因が夫婦が寝室を共にしていることに起因しているとお考えの方
  3. 子育てが終わり、夫婦別寝室をお考えの方

本記事では「夫婦別寝室」についてリノベーション案を考えてみます。

某住宅メーカーで1,000の間取りをクリエイトしてきた筆者が、住宅のプロとして解説していきます。

目次

夫婦別寝室について考える

ビジネス誌「プレジデント」(2018年9月17日号)の特集「頭がよくなる睡眠、バカになる睡眠」の中で、東京疲労・睡眠クリニックの梶本修身院長は 「今の医学では、良質な睡眠をとること以外で、疲労を回復させる方法はない」と語っています。

ところが、健康分野のデータプラットフォーム会社、ドコモ・ヘルスケアが公開した夫婦の睡眠に関するレポート(2018年10月にアンケート実施。876人が回答)によると、興味深い結果が見えてきます。

一緒に寝ている夫婦は36%

同じベッドで寝ている夫婦は36%。

さらにそのうちの29%は、睡眠時にストレスを感じているという結果が出ました。

その一方で、別々に寝ている夫婦は睡眠の質が高いということもわかりました。

ちなみに夫婦別々に寝ている理由としては「生活リズムが異なるため」という答えが一番多かったものの、お互いのいびきや寝相の問題を合計すると、僅かながら「生活リズムが異なるため」よりも多いという結果となっています(下図参照)。

このデータは、あくまでも「同じベッドで寝ているか」という設問に対する答えですが、ここに「お互いに快適と感じる空調の温度設定」等の問題を加味すると、寝室が一緒だからこそ生まれるストレスというのは間違いなく存在します。

夫婦で寝室を分けるメリットとデメリット

ただし、ストレスがあるからといって、即、寝室を分けた方が良いと結論づけるのは早計です。

まずはメリットとデメリットを確認しておきましょう。

メリット

  1. 自分好みの環境を作りやすい(マットレスの硬さや温度設定など)
  2. パートナーの寝相やいびきを気にしなくて済む(パートナーにもストレスを与えずに済む)
  3. 自分のペースで就寝できる(就寝前の読書など、パートナーに気を遣う必要がない)

デメリット

  1. スキンシップ、会話が減る
  2. 寝具や家電はもちろん、もう一部屋必要になるなどコストがかかる
  3. パートナーの体調、異変に気づきにくくなる

夫婦間のコミュニケーションが良好かどうかは、寝室が別かどうかだけの問題ではありませんが、それでも一緒に過ごす時間が減ることは理解しておく必要があります。

ただし、もう一部屋用意できるか、といった物理的な問題や、寝具やエアコン、空気清浄機などの家電をもう一部屋分買い足さなければならないというのは、かなり現実的な問題です。

コストは思ったよりかかる可能性があり、これが原因で夫婦別寝室の実現に二の足を踏んでいるご夫婦も少なくありません。

また、もっと深刻なのはデメリットの3です。

数年前のことですが、夫婦別寝室にしていた会社の上司が心筋梗塞で亡くなっているのを、奥様が朝になって発見されたということがありました。特にご年配のご夫婦は注意が必要です。

しかし、デメリットにばかり目を向けていたら、いつまで経っても睡眠環境は改善されず、そのせいで慢性的な疲労に悩まされることだってあり得ます。それが原因で体調を崩してしまうようなことがあれば、それこそ本末転倒。我慢することが美徳などとは考えず、毎日元気に充実した生活を送れるようにすることが最も重要でしょう。

リノベーション前のベースプラン

間取りと広さ

築43年の平屋建住宅をベースプランとします。

間取りは2LDK。

床面積は91㎡(27坪 ※いずれも小数点以下切り捨て バルコニー含まず)

ベースプランの特徴

間取図から読み取れる、ベースプランの特徴を図面上に書き込んでみます。

ベースプランのメリット

必要な部屋数と広さが既に揃っている

今回の夫婦別寝室をつくるという目的に照らせば、既に必要な部屋数と広さは揃っています。

じゃあ、わざわざリノベーションなんてする必要あるの?といえば、それは勿論あります。

その理由は、以下デメリットの項目で説明します。

ベースプランのデメリット

玄関の収納不足

元々が和風の平屋であることもあり、玄関扉は引き違い戸。

玄関自体の広さも必要最低限となっており、玄関収納はカウンタータイプの下駄箱がひとつ。

2人だけの生活でも、ブーツなどの置き場に困りそうですし、お友達を招いたりしたら、玄関が靴で埋まってしまう可能性が否めません。

住まいの顔たる玄関ですから、スッキリしまえて美しい空間にしておきたいものです。

無駄に長い廊下

洗面所への通路として設計された無駄な廊下が気になります。

洗面所への出入りを見直せば、このスペースは有効に使うことができそうです。

いびつな形の洋間(バルコニーに続く部屋)

広さは6畳と充分なものの、形状が歪で、お世辞にも使いやすそうとは言えない洋間です。

入口等を見直せば、もっと使いやすい形状に変更できそうです。

窓の無いトイレ

今は換気扇に加えて、消臭機能がついた便座などもあり、絶対的に窓が必要だとはいえませんが、それでも自然光が入る明るいトイレというのは、それだけで清潔感があります。

収納の無い洋間

洗面所、浴室隣の洋間は、広さは6畳あるものの、収納がゼロ。

これでは、寝るだけの空間にしかならず、個室という意味合いが薄れてしまいます。

そもそも、収納は少なめでも部屋の広さを確保するという考え方は、箪笥などの収納家具を使う前提の間取りですから、現代とはそもそもの住まい方自体に食い違いがあるように思います(もちろん、オシャレな箪笥などを積極的に持ち込みたいというなら、話は別ですが、その際は地震などに備えて、家具類が倒れないような工夫はしておいた方が良いでしょう)。

洗濯カゴやタオルなどの備品の置き場が無い洗面所

広さは充分ですが、通路ばかりでモノを置くスペースがありません。

TVの置き場が見当たらないLDK

上図の通り、TVを置ける場所というのがどちらかしかなく、しかしどちらに置いても、ソファの良い収まり所が見つからないのです。

全体的に収納不足

収納率が、床面積に対して3.27%と、理想値と言われる15%前後とは隔絶した数値。

ミニマルな生活を志すとしても、流石に日常生活で不満が噴出しそうな数値です。

リノベーション後の新プラン

下書き

まずはザックリとアウトラインだけ。

先述した不満点を解消していきます。

今回のリノベーションのポイントは以下の通り。

Point

  1. 玄関の収納量増
  2. バルコニーに面した洋間を使いやすい形状に変更
  3. トイレに窓を追加
  4. もう一つの洋間に収納を追加
  5. LDKにTVを無理なく置けるスペースを創出
  6. 洗面所に洗濯カゴや備品置き場を追加
  7. 全体的に収納量を増加

完成図

そうしてリプランニングした図面がこちらです↓

Before & After

リプランニング前後で比較してみましょう。

リプランニングのポイント

リプランニングのポイントを図面に書き込んでみます。

玄関は安全性や気密性なども考慮し、玄関ドアに変更。

下駄箱はシューズクロークに変更し、収納量を増加しました。

玄関周りがスッキリ片付くようになりました。

バルコニーに面した寝室は、歪だった形を整え、収納も追加。

全体的に使いやすさをアップしました。

トイレには窓を追加し、清潔感と明るさを手に入れました。

もう一つの洋間は、廊下を潰して収納を追加しました。

実はもう少し収納を追加する方法もあるのですが、下図の通り、トイレの扉と洋間の扉がぶつかります。

些細なことかもしれませんが、毎日のことですから、一度気になりだすとストレスとなります。

ストレス解消のために夫婦別寝室とする間取りをご提案しているので、こういった不安要素は取り除いておきたいところです。

また、洗面所にも備品などをしまえる収納スペースを用意しました。

LDKには収納を追加し、キッチン正面の窓を高窓に変更することで、壁面を設け、TVを設置できるようにしました。

これによって、ソファで寛いでいる時だけでなく、キッチンでお料理をしながら、ダイニングで食事を摂りながらもTVを楽しめる配置となりました。

まとめ

熟年離婚なんてドラマが流行ったのが2005年のこと。

しかし、今やそれはドラマの中の話ではなく、現実の世界で珍しくもなく起こり得る出来事となっています。

子はかすがいではありませんが、子育てが終わった後で離婚という道を選ぶご夫婦が後を断ちません。

しかし、子育てが終わった後だからこそ可能となる2人の生活というものもきっとあるはず。

今回のリノベーションは、そういった熟年離婚を食い止めたいという思いからつくったものではありませんが、子育てが終わったご夫婦にこそ、新しい暮らし方の一つとして見ていただきたいご提案ではあります。

睡眠も含め、自分だけの時間も楽しめれば、ご夫婦での時間も一層楽しめるはずですからね。

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

住宅メーカー勤務。不動産で「絶対に失敗したくない」人に向けた情報を発信/ 所有資格: 宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・管理業務主任者他
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