人気の家事動線『回遊動線』のメリットとデメリット

[ad01]

「家事動線」という言葉をお聞きになったことはありますか?

「家事動線」とは、家事を行う際の経路の事です。

例えば、食事の準備中にお風呂の用意をしようとキッチンから浴室に移動するとか、バルコニーなどに濡れた洗濯物を運ぶ際の経路が挙げられます。

日常的な動作のしやすさや、毎日移動するA地点からB地点までの距離は誰でも気になります。

つまり、その言葉を知らなくとも、誰もが気にせずにはいられないのが「家事動線」なのです。

そんな家事動線の中で最も有名なのが「回遊動線」です。

これは各部屋の配置や扉の位置を工夫して、ぐるりと行き止まりなく、ムダなく移動できるようにしたものですので、実際に目にしたほとんどの方は「便利そう」「使いやすそう」といった感想を持つはずです。

しかし、本当にそうでしょうか?

メリットしかないものなど存在しません。

本記事では、某大手住宅メーカーで1,000を超える間取りをクリエイトしてきた筆者が、「回遊動線」のメリットとデメリットを解説します。

[ad01]
目次

これぞ定番!水回りの回遊動線

「回遊動線」のサンプルプラン

これが水回りの「回遊動線」の一例です。

この例では、洗面所をキッチンに隣接し、キッチンと廊下の二方向に扉を設けることで、行き止まりなく人が動けるようになっています。

すると、矢印で示したように、水廻りをぐるりと回るように移動することができるので、行きたい所に最短距離で行けます。

食事の支度をしながら洗濯機を回したり、お掃除の効率も良さそうです。

人気があるのも頷けますね。

回遊動線の問題点

ただし、先ほどのプランには、気になる点もあります。

気になる点

  1. キッチンが通路になる
  2. 動きやすそうなのは、ダイニングテーブルを置いていない時だけ
  3. 洗面所に洗濯かごやタオルなどの常備品を置くスペースがない
  4. 2ヵ所から出入りできる洗面所は、着替えや入浴の際に誰かが入ってくる可能性もあり、落ち着かない
  5. 回遊動線は子供達が走り回るのにうってつけ
  6. 小さな子供がキッチンに入れないように柵を設置しても、洗面所側からは入れてしまう

特に❸が気になります。

なぜなら収納の問題は後で必ず不満の出る項目だからです。

マイホームを購入された方に、不満点についてアンケートをとると、毎回上位にくるのが「収納不足」だということを見ても明らかです。

また、意外と気になるのが❹です。

バスタイムは1日の疲れを癒す貴重な時間です。

その時、隣の洗面所に家族が頻繁に出入りするようでは落ち着けません。女の子のいるご家庭では尚更嫌がられるでしょう。

お子さん達と一緒にいられる時間というのは思ったよりずっと短いものです。特に、目が離せない時期は、あっという間に過ぎ去ってしまうもの。

”子どもをお風呂に入れやすいから”といった理由を最優先にしてしまうと、いずれ思わぬ後悔が訪れる可能性があるということです。

ですから間取りを考える際には、現状だけに捉われるのではなく、その先にまで考えを巡らすことが重要です。

回遊動線の問題点を解決するには

さて、それでは今回の問題の原因はどこにあるのでしょうか?

もう一度この間取りを見てみると、洗面所の在り方というのが大きなポイントになっている気がします。

例えば、洗面所を次のように変更したらどうなるでしょう?

思い切ってキッチンとの繋がりを断ち、洗面化粧台と洗濯機の設置箇所を変更します。

これによって生まれるデメリット、メリットは以下の通り。

デメリット

  1. キッチンとの繋がりがなくなる

メリット

  1. 洗面所に洗濯かごの置き場ができる
  2. 洗面所にタオルなど常備品の置き場ができる
  3. 洗面所の出入口が1ヶ所となり、落ち着いた雰囲気になる

数えてみると明らかにメリットの方が多いので、この案を採用する方向で調整してみると、下図のようになります。

変更点

  1. 洗面所とキッチンを切り離す
  2. 洗面化粧台と洗濯機のレイアウトを変更
  3. キッチンの設置位置を変更
  4. リビングと廊下を繋ぐ扉位置を変更

回遊ができなくなりましたが、洗面所に必要なモノの置き場ができ、浴室も落ち着いた雰囲気に生まれ変わりました。

どんな家でも回遊動線が良いとは限らない

ここまで検証をしてみて感じたのは、”不満の無い回遊動線とするには、建物にある程度以上の広さが必要なのではないか?” ということ。

例に挙げたプランは、キッチンのすぐ横に洗面所と浴室を一直線に設けたもので、どれも必要最低限で非常にコンパクトなもの。

そのコンパクトさゆえに、人が動くスペースを確保するために収納スペースなどが犠牲になっている感がありました。

いくら便利な動線とは言え、収納スペースを犠牲にしてまで確保するほどの価値があるとは思えません。

そもそも人がスムーズに動くためには、人の動きを阻害するものがあってはならないからです。

どんなに通路を整備したところで、そこに収納から溢れた道具や荷物が転がっていたらどうでしょうか?

本来の「人が動きやすい」というポテンシャルが全く発揮できません。

それでは、下図のような間取りだったらどうでしょうか?

途端に“回遊動線”って良さそうだな、となりませんか?

先程、問題点として挙げたほとんどがクリアされます(子供たちがキッチンに入り放題というのだけは、どうにもなりませんが)。

ただし、割と面積が必要な間取りではあります。

つまり“理想的な回遊動線プランを作るには、ある程度の面積が必要”だというのが大前提。

“コンパクトな間取りでもできないことはないが、かなり制約も多くなる”ということは理解しておくべきです。

間取りに100%の正解はありません。人の数だけ要望やこだわりは違うからです。

ですから、今回の案も解決策の一例でしかありません。

見る人が変われば、まるで印象が違うでしょうし、別の案も当然に出てきます。

しかし、一見完成形に見える間取りも、考え方一つで大きく変化することが、今回の検証でお分かりいただけたのではないでしょうか?

他人(特に商談相手の建築家や営業など)の意見を鵜呑みにせず、メリットだけでなくデメリットにも目を向けることが重要です。

特に新築住宅は、施主の自由にできる分、夢ばかりが拡がり、現実がないがしろにされてしまうこともよくありますので、後悔しないためにも、冷静さだけは忘れずに。

そのためにも、間取り図をある程度は読み取れるようになっておくと有利です。

最後にこんな本をご紹介します。

広い家に住みたい、大きい方が便利そうという漠然としたイメージを持たれている方も多いのですが、実際の使いやすさって、間取りや動線で決まることがほとんどです。

この本には、そうしたヒントが書かれています。

つまり、広くなくとも良い家はつくれるということ。

これから家の購入やリノベーションをお考えの方には希望を与える内容だと思います。

それでは、ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

[ad01]
よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

住宅メーカー勤務。不動産で「絶対に失敗したくない」人に向けた情報を発信/ 所有資格: 宅地建物取引士・管理業務主任者他

WordPressテーマ「SWELL」

目次
閉じる