デザイン偏重で良いの?オシャレさと実用性を兼ね備えたマンションのリノベーションプラン

リノベーション済みの中古物件が人気です。

しかし、リノベーション済みだというだけで、目の眩む人たちが多いのも事実。

よく見ると、問題のある物件も数多くあります。

今回は、とあるチラシに掲載されていたリノベーション済み中古マンションを例にして、マンションならではの問題点とマンションリフォームの注意点、さらに既にリノベーション済みの物件をもう一度改めてプランニング(リプランニング)するなら…といったことを記事にまとめました。

目次

リプランニング前のベースプラン

※家具の配置はチラシに記載されたままとしています。

築38年の中古マンションをリフォームし、おしゃれっぽくまとめた1LDK。

床面積は59㎡(17坪)。※いずれも小数点以下は切り捨てています。

今回はこれをベースに、リプランニングしてみます。

リプランニングの前提条件として

まずマンションの場合、外壁や窓、玄関ドアなどは個人の専有物ではないため、勝手に交換することは勿論、外壁部分に窓を追加したりすることはできません。これがリフォームの際、大きな制約となっています。

また、水廻りの配置を変えるというのは、とにかくお金がかかります。床を剥がして、配管をやり直してという作業が必要ですから。

おそらく、このベースプランもそういった理由で動線の悪い間取りになっているのだと想像しますので、今回は水廻りの配置はそのままという縛りを設けます。要するに、節約しながら、もっと使いやすい間取りにできないか挑戦してみます。

ベースプランの良い点

特に玄関に現れていますが、開放感が素晴らしいと思います。

マンションというと、大抵は限られたスペースの有効活用に特化していて、部屋数はあるけど収納は無く、何処に居ても四方を壁に囲まれているという印象が強いものですが、このプランだと玄関は広く、シューズクロークまで用意され、LDKも遮蔽物を出来る限り取り払って、開放感と明るさを得ることに成功しています。

リゾートマンションとしての使い方なら、抜群だと思います。

ベースプランの気になる点

では、毎日普通に暮らす家として見てみるとどうでしょうか?そこに気になる点が見えてきます。

❶玄関周りに面積を割きすぎているように見受けられます。

おそらくシューズクローク的な提案だと思いますが、それにしても部屋の大きさに比べて玄関周りだけが異様に広く見えます。

❷洗濯機の向こう側に45㎝程度の空間があります。

一見、洗濯カゴやタオルなど常備品の置き場にできそうですが、位置的に少し使いづらいように思います。

❸リビングを見ると、ソファの向かいの壁面がTVボードの置場になると思われますが、リビングドアの位置と開き勝手が悪く、TVボードをソファの真正面に設置するのは難しい状況です。

❹一見すると、ダイニングキッチン周辺に開放感があり、回遊動線を使って家事効率も考慮されているように見えますが、リビングからダイニングへの通路が狭いと感じます。

マンション特有の柱もただの障害物になっています。もう少し上手く活用できないか考えてみます。

❺最大の問題点は、収納が殆ど無いことです。

❹で挙げた玄関横のスペースがシューズクロークだとしても、日用品などの収納空間が見当たりません。

まるで、ミニマリスト限定プランのようです。

間取りには住まい手の価値観が大きく関わってくるので、絶対的な正解や不正解は無いと思いますが、今回は敢えて、上記5点を解決できるようリプランニングしてみます。

リノベーション後の新プラン

そうして完成したのがこの間取りです↓

まず❶のダイニングキッチンですが、キッチンのカップボードを壁側に寄せました。

キッチン周りの回遊動線がなくなる、冷蔵庫がキッチンを通らないと使えなくなるというデメリットもありますが、LDKの中心部分に空間が生まれるので、移動しやすい間取りになったと思います。

また、ダイニングにはバルコニー脇の柱を利用して、本棚兼飾り棚を設けてみました。

次に❷ですが、洗面所面積を少し減らし(これで❸の問題も解決)、リビングの入り口を45㎝程度キッチン側に寄せると、隣家側にずらっと奥行45㎝程度の空間が生まれるので、そこに収納を追加し、TVボードを収めることも可能となりました。

❹については、とりあえず玄関は三和土(たたき)の奥行きを伸ばし、玄関ドアを開けた正面廊下は20㎝ちょっと幅を広げて、圧迫感が無いようにしました。玄関を入って左側には収納扉が並びます。中を可動棚にすることで、下駄箱にも、それ以外の収納にも使えます。

そして❺は、❶〜❹の変更部分に追加した収納に加え、シューズクロークになっていた部分を納戸にしました。

寝室にも収納スペースと呼べる部分が殆ど無かったので、まとまったサイズの収納が1カ所は欲しいと考えたのです。

ついでに、玄関からリビングに向かう廊下の突き当たりが暗くなるのを防ぐために、リビングの扉はガラス入りで、リビングからの自然光や明かりが廊下に漏れるようにし、さらに飾り棚をつけました。

勿論これでもベースプランほどの開放感は望めませんが、間接照明の配置と壁紙の張りわけなどによって、落ち着いた、おしゃれな空間に仕立てられると思います。

まとめ

同じ条件であっても、考える人が変わるだけで、まず間違いなく違うものが出てくるのが「間取り」です。

とても数学的でロジカルな部分もありつつ、作り手の想いといった曖昧なものが反映される側面もあり、本当に底知れぬ世界です。

本記事のベースプランは、ベースとなるマンションが築38年ということもあり、とにかく見た目のインパクトを重視したのだと思います。

実際、マンションは狭いという一般的な認識を、玄関ドアを開いただけで打ち壊せるほどの開放感がもたらすインパクトは容易に想像できます。

しかし、少し引いて冷静にこの間取りを眺めてみると、実用性がどこかに置き去りにされている感は否めません。

どちらが正解とは断言できませんが、実際に暮らしてみれば、間違いなく今回の新プランに軍配が上がると思います。

上述したように、1年のうち、ほんの数回程度泊まりに来る、リゾートマンションのような用途ならベースプランのままでも何ひとつ問題はないと思いますが、そこを生活の拠点にするのなら、見た目に流されずに冷静に分析することは絶対に必要です。

あなたが、末長く快適な住まいを手に入れられることを心より祈っております。

それでは、ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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この記事を書いた人

住宅メーカー勤務。不動産で「絶対に失敗したくない」人に向けた情報を発信/ 所有資格: 宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・管理業務主任者他
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