賃貸住宅で、うっかり何かを落としてしまい、フローリングを傷つけてしまった…こういうことってよくありますよね。
傷をそのままにして退去する人って多いのですが、下手をしたら、それだけで何万円も請求されるケースもあります。
傷の程度によりますが、リペア業者の工賃はめっちゃ高いです。
マンションなどで使われている遮音フローリングの張り替えともなれば、1枚で3〜4万円ほど請求されることもあるのです。
ところが、ちょっとしたアイテムを購入し、ほんの5分ほど作業をするだけで、その補修金額をマルッと浮かせることが可能だと言ったらどうしますか?
「フローリングの補修なんて、プロじゃなきゃできないでしょ?」
あなたはそう言うかもしれません。
「それに、そのアイテムだって安くは無いんでしょ?」
とも言うかもしれません。
確かに、単体で見れば安くはありません。
しかし、数千円の出費と、ほんの5分程度の時間を費やすだけで、数万円もトクすると言ったらどうですか?
某住宅メーカーに20年在籍し、不動産管理の現場も経験してきた筆者が住宅のプロとして、オススメのアイテムとその使い方を実際の写真と共に解説しますので、どうぞ最後までお付き合いください。
フローリング補修にオススメのアイテム
まずは結論。
フローリング補修にお勧めしたいのはこちらのアイテム↓
7,000円も出さなきゃダメなの? と思う方もいることでしょう。
確かに安くはありません。
だからこそ、誰にでもオススメはしません。
しかし、それだけの出費で、その何倍もの損失を防げるかもしれないのです。
どんな傷が補修の対象になるの?
まずは退去時に請求されるフローリングの傷の程度と、その補修金額の目安を知ってください(※金額は目安です。地域や施工業者毎に差はあると思ってください)。
小さな凹みや擦り傷(表面だけ・数カ所)
ほんの小さな凹みや擦り傷程度であれば、請求されないか、もしくは単純に見過ごされてしまう可能性があります。
中には、どんな些細な傷さえも見逃さない上に、必ず補修を要求するような管理会社やオーナーもいますが、大抵はこの程度なら仕方ないと目を瞑ってくれることが多いと思います。
では、「小さな」というのは具体的にどの程度のことをいうのかといえば、これは立ち会う人の個人差もあると思いますので、あくまでも“私なら“、およそ3cm程度までの線状の傷で、凹んだ箇所のフローリングの下地が見えていない状態です。
厳密に現場で傷の長さや深さを測定したりはしないので、パッと見では気づかない程度と言い換えても構いません。
そして、この傷がほんの数カ所なら、私なら何かのついでに軽く補修してしまいます。
小さな凹みや擦り傷(表面だけだが、無数)
これは実例の写真が見つからなかったのですが、イスで船漕ぎでもしたのか、イスの脚の跡が無数に、しかも同じような箇所に集中してついている時があります。
これは一つ一つの傷の大きさや深さはともかく、傷が目立つ状態ですから、補修の対象となります。
補修には大きく分けて、一つ一つの傷をパテで埋める補修と、フローリングの張り替え補修がありますが、このように小傷が無数に、といった場合には、傷を一つ一つ潰す方が手間もお金もかかりますので、通常はフローリングの張り替えを行います。
大きな凹みや擦り傷、もしくは小さな傷でも下地が見えている状態
こういった傷は問答無用で請求の対象になります。
上の写真のように、ほんの小さな傷でも下地が見えてしまう状態だと、補修せざるを得ません。
小さな傷ならパテで部分補修、大きな傷ならフローリングの張り替えとなります。
フローリングの構造
住宅、もしくはアパートなどで一般的に使われているフローリングは、ほとんどが「複合フローリング」と呼ばれるものです。
これは無垢のフローリングとは違い、合板でできた台板の表面に化粧板を貼ったものです。
上述した「下地が見える状態」というのは、この表面化粧板を突き破ってしまい、その下の合板でできた台板が見えている状態です。
※無垢より安いというイメージばかりが強い複合フローリングですが、無垢とは違い反りや収縮といった変形に強いうえ、この表面化粧板の材質によっては、傷に強いといった特性を持たせることもできるため、手間要らずの便利なフローリングを求める方には最適な選択肢です。
フローリングの補修費用は?
それでは、フローリングの補修費用というのはどのくらいかかるものなのでしょうか?
まずは凹み傷などの補修については、大きなものでなければ、補修に要する時間など1カ所あたり、ほんの数分です。
とはいえ、修理業者に支払う金額と言うのは、時給ではなく、出張料と技術料となりますから、例え1カ所であっても最低6,000円〜8,000円。
通常、1万円程度は請求されると思ってください。
ただし、小さな傷が2〜3カ所増えたところで、作業量自体はほとんど変わりませんので、2倍、3倍にはなりません。
ですから、小さな凹み傷の補修が数カ所程度なら、およそ10,000円程度の費用を請求されると考えてください。
傷が少し大きく広範囲になると、単純なパテ埋めだけでは不完全で、パテで傷を埋めた後にそれらしく木目を描き込んだりする手間も必要となるため、その場合はもう少し費用が必要となります。
半日程度の作業なら15,000円程度、丸一日の作業なら30,000円程度が目安となります。
補修費用は全額入居者負担となります。
次に、フローリングの張り替えが必要だと判断された場合です。
この場合、フローリング自体の単価にもよるので、一概にはいえないところもありますが、しかし目安としては、フローリング1畳分の張り替えで20,000円程度と思ってください。
これは単純に1畳あたりの目安なので、2畳、3畳と張り替え面積が増えれば、その分2倍、3倍になると考えてください。
フローリング張り替えの場合も、傷ついた部分だけの張り替えなら全額入居者負担となります。
ただし、傷が部屋全体にあるような場合には、当然、部屋全体の張り替えが必要になりますが、このような場合には、オーナーも費用負担を求められるのが、今のルール(国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に基づく)となっています。
Point
例えば、今賃貸しているアパート(住宅用)が、木造ならば(表②の耐用年数左上から2番目)、耐用年数は22年。
つまり、新築時に新品だったフローリングは、22年で価値がほぼゼロになると言うことです。
オーナーは、このことを前提として費用負担をしなければいけません。
わかりやすくいえば、22年以上経過したフローリングを入居者が傷つけて張り替えなければならなくなったとしても、ほぼ0円の価値しかないフローリングが新品になるとしたら、オーナーにはトクしかありません。
そのため、張り替え費用はほぼオーナー負担とするのが今のルール(過去の判例によると、入居者に請求できるのは10%程度)。
※ただし、これはあくまでも全体的に張り替える場合に限るため、一部だけの張り替えなら入居者負担で構いません。
実際の補修作業
それでは、具体的にどのような作業が必要になるのか実例を基にご説明します。
商品外観です。
「大工さんの補修箱」というネーミングにオシャレ感はゼロ(笑)
ただし、これでもかというほどにわかりやすくはあります。
中身です。
まずは全12色のシェラックつや消しスティックです。
「シェラック」とは?
ラックカイガラムシという種の分泌物を精製して得られる樹脂状の物質。
ニスやワックス、接着剤などに用いられている。
これを溶かして傷を埋めます。
溶かし合わせて調色も可能ですが、慣れないうちは難しいです。
ホットナイフ。
単三乾電池2本(別売)が必要です。
これでスティックを溶かし、傷口に流し込みます。
その名も「ゴシゴシスクレーパー」。
溶かしこんだシェラックを削って平らにするための道具です。
これは使用後に撮った写真ですが、ギザギザの部分で削ります。
マーカー↑
今回は使いませんでしたが、補修箇所が広範囲な場合などは、どうしても溶かしこんだシェラックが目立つため、こういったペンを使って木目を描き足してあげる必要があります。
これ以外にも、拭き取り用のウエスとやすりが同梱されていますが、いずれも今回は使わないため、割愛します。
それでは作業を始めます!
コレが今回の作業箇所です。
何かを落とした跡が、ベコッと凹んで下地が見えています。
まずは色合わせ。
どちらかだと思われるスティックを2本共床に置いてみます。
結果、上の薄い色のスティックの方が違和感が無いことがわかりました。
この色合わせこそが作業のキモだと思ってください。
ここを間違えると、傷がめちゃくちゃ悪目立ちします。
続いてホットナイフを起動します。
まずは手元のスライドスイッチをON。
しかし、この状態ではまだ作動していません。
スライドスイッチの上にあるプッシュボタンを押すと手元のランプが赤く点灯します。
これがホットナイフの先端に熱が入っている状態です。
スティックを傷に溶かし込んだ状態です。
1分と待たず、硬化し始めます。
ゴシゴシスクレーパーで表面を削って平らにします。
端が少し欠けてしまいました。
このままでもパッと見はわからないような気もしますが、せっかくなのでもう一度やってみます。
再度、スティックを溶かして盛りました。
硬化したのを確認して、もう一度ゴシゴシスクレーパーで表面を削ります。
さっきよりもずっと良くなりました。
立ち上がって見てみますが、パッと見ではまず気がつきません。
よく見たら、木目が途切れているのでなんとなくわかるんですけどね。
ここでさらに、先ほど紹介したマーカーで木目を描き込めば、さらに完成度は上がるのですが、この現場はこれでも充分だったので、ここまでにしておきます。
ちなみにここまでの所要時間は、やり直しも含めて5分でした。
フローリングの凹み、擦り傷をおトクに直そう
本記事でご紹介したアイテムで直せる傷は、フローリングの凹み、擦り傷です。
表面の剥がれなどは、小さな範囲なら直せますが、広範囲なものは難しいと思います。
なお、階段の段板などの凹みも同様に補修することが可能です。
購入時に7,000円程の出費が必要となりますが、これによって例えば1畳分のフローリングの張り替えを回避することができたら、
20,000円(1畳分の張り替え工事費)ー 7,000円 = 13,000円(原状回復費用として請求されていたはずの費用)が浮くことになります。
張り替えまでの必要はなく、補修作業で10,000円請求されると考えても、3,000円程トクする計算になります。
また、転勤等で賃貸生活を今後も余儀なくされる場合には、一度購入しておけば、ホットナイフが故障するかスティックが消耗してしまうまでは何回でも使えますから、払わなくても良い金額はもっともっと増えます。
今回は賃貸での活用方法に絞ってご紹介しましたが、もちろん購入したマイホームでの使用も可能です。
末永く大切にしたいマイホームだからこそ、ちょっとした補修は自分でやることで、より愛着が増します。
フローリング等の凹みの補修には、傷に塗り込むだけのクレヨンもあるのですが、本当に誤魔化すことができる程度で、傷への付着力が弱く、ちょっとした衝撃でいともカンタンに剥がれてしまいますので、安いですが、オススメはしません。
しかし、やはり7,000円も出すのは気が引けるという方には、こちらをご紹介します↓
ホットナイフの代わりに電気ごてが付属となるセットです。
細かい使い勝手は劣りますが、同様の補修ができるアイテムが1,000円ちょっと安く手に入るというのは魅力です。
ただでさえ安くない引越し費用に加えて、退去時の原状回復費用までごっそり請求されないよう、自衛策は絶対に考えておくべきです。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。