オカムラのフラグシップ『コンテッサ・セコンダ』を購入した。
およそ20万円もする高級オフィスチェアである。
購入するにあたっては、公式サイトで事細かく調べ、比較記事などを何度も何度も見返し、何週間もうんうん悩んで、ようやく決断・・・したわけではない。
確かにさまざまなサイトで調べものはした。
しかし、このコンテッサ・セコンダに関しては、高すぎるという理由で、除外していたのだ。オフィスチェア一脚にかけられる予算なんて、高くとも10万円程度だろうと考えていた。
他の商品が見たくて出かけたお店で、気がついたらコンテッサ・セコンダを購入していた。
これはそういう記事である。
そして、実際に購入したコンテッサ・セコンダの使用感などを、実際の画像と共にご紹介する。
オフィスチェアの購入をお考えの方、コンテッサ・セコンダをご検討中の方はもちろん、私が比較検討していた機種についてもショートインプレッションを記載しておくので、ご参考にしていただければ幸いだ。
比較機種一覧
まずは、私が今回、オフィスチェアを購入する際に比較検討した機種を一覧にし、それぞれの印象を簡単にご紹介する。
ここでご紹介する機種は、全て実物を確認できたものである。気にはなっても、実物を確認することができなかったもの(オカムラ・スフィア、コクヨ・ing LIFEなど)は割愛する。
ただし、店頭で短時間触れた時の印象でしかないため、実際に購入して使用している方のレビューには、信頼度も深みも及ばないのは間違いない。あくまでもご参考にとどめていただければ幸いである。
オカムラ・シルフィー
国産メーカーである株式会社オカムラから販売されている大人気のオフィスチェア。「オフィスチェア・おすすめ」で検索をかけて表示される、サイトの多くで最高評価を叩き出している優等生。
仕様によるものの、80,000円台が人気の価格帯のようだ。
ただし、80,000円もするチェアと考えると、高級感は薄い。普段は会社で10,000〜20,000円程度のオフィスチェアに座っている私からしても、ちょっとオシャレなチェアくらいのイメージしか湧かなかった。
実物を確認する前は第2候補だったが、先述した通り、見た目は普通でときめきはなかった。たかが椅子にときめきもないだろうと言われるかもしれないが、しかし、どうせ買うなら、心がときめくものを買いたいと思うのは自然である。
また、座ってみると、背もたれのカーブが私にはキツすぎて、こちらも印象はイマイチ。操作も初見ではわかりづらく、どうしても思ったような姿勢をとることができなかった。
しかし、単に操作に不慣れなことと、私の体型のせいかもしれないと思い、一緒にいた妻にも座ってもらったが、やはりカーブはキツイとのこと。常に前傾姿勢でガツガツ仕事をするには良さそうだが、リラックスはできなかったと言っていた。
背もたれのリクライニングの調整も、柔らかく設定すると、ガクンと唐突に倒れ込み、固くすると、今度は結構力を入れないと倒れない印象で、とにかく不自然さがつきまとった。
とはいえ、これだけ人気のチェアなのだから、私たち夫婦には合わなかった、というだけなのかもしれない。
オカムラ・フィノラ
こちらは全く予想外の伏兵。
シルフィーの横に置いてあったので、ついでに試してみただけだったのだが、これが存外に良かった。
座り心地が良いのはもちろん、シート下に集約された操作系にはアイコンが記載されており、どれをいじると何ができる、というのが一目瞭然。
デザインとしての存在感も、シルフィーとは比べものにならない。
それもそのはず、デザインは、あの「イタルデザイン」である。クルマ好きなら、この名前だけでハッとするはずだ。
初代フォルクスワーゲン・ゴルフ、ランチア・デルタ、フィアット・パンダなど数々の名車を手掛けたことでも有名だが、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に登場したデロリアンをデザインしたのも同社である。
とはいえ、店頭にあった展示品の価格は140,000円ほど。おいそれと出せる金額ではない。
しかし、座ってみたら、気に入ってしまい、これにしようか、という話になってしまった。
コンテッサ・セコンダに座ってみるまでは・・・。
ハーマンミラー・セイルチェア
アメリカのハーマンミラー社のプロダクト。デザイナーのイヴ・ベアールは、橋の下を通る帆船をイメージしたそう。
その独創的なフォルムに一目惚れ。私の第1候補だった。
価格は安い仕様だと、80,000円程度からあるようだ。オカムラ・シルフィーと真っ向勝負の競合機種といった雰囲気だが、デザインの独自性は頭抜けている。
実際に見ても、その印象は変わらず、座った感じも好印象。座面は硬すぎず、柔らかすぎず、とても座り心地が良い。特徴的なYフレームに張られた目の大きなメッシュのシートバックも、しっかりと背中を支えてくれる。オプションでランバーサポートもつけられるようだが、あまり必要性は感じなかった(ランバーサポート自体を試すことはできなかったが)。
ただし、調整を行う各種レバーはパッと見では何が何だかわからなく、操作に要する力も重めだ。これはしっかりしている、と言い換えられるかもしれない。
リクライニングに関しては、オカムラ・シルフィーよりも極端な調整が目についた。ここまで柔らかいというか、思いっきりガクン!となるリクライニングを必要とする人がいるのか、本当に不思議である。というか、この価格帯では、こういった調整が普通なのだろうか?
また、ネットで、背もたれの部分に埃が溜まりやすいという意見を見かけたが、確かにそれは感じた。実は、この背もたれ部分をファブリックにすることもできるらしいのだが、それでは、この特徴的なデザインが損なわれることになる。
そういった意味では、オープンカーのようなもので、実用性とカッコ良さのどちらを取るか? みたいな選択を迫られることになりそうだ。
ちなみに、このセイルチェアと後述するアーロンチェアは、いずれも12年保証。ハーマンミラー社の自社製品に対する自信が窺える。
ハーマンミラー・アーロンチェア
こちらは完全に「憧れ」枠。
金額的には200,000円を下回らないため(廉価版として、いくつかの機能を割愛した「アーロンチェア・ライト」という機種はある。こちらは10万円台前半から)、とても手を出せない、と思っていたが、ニューヨーク近代美術館で永久収蔵品に認定されたり、数々の映画などにも登場しているという名作チェア。
一度は座ってみたい、という気分にさせてくれる。
今回、オフィスチェアを購入するということで、実物を確認してみたが、その存在感は確かに本物。ただし、ゴツい。
同社のプロダクトであるセイルチェア同様、操作系もがっちりしている。
か弱い女性が気軽に使う、というイメージは浮かばず、漢(オトコ)のチェア、といった雰囲気に満ち溢れている。
背もたれだけでなく、座面までメッシュとなっており、通気性も良さそうだ。座面は部位によってテンションが違うとのことだが、確かに座り心地も上々。
ただし、ブラックのメッシュは「網戸」みたいにも見えてしまう。これはアーロンチェアに限らず、だが。
機能面でのメリットはいくつもあるのだろうが、ゴツいフレームに黒い網戸が張られたチェアといった雰囲気を許容できるのは、やはり圧倒的に男性だろうし、それを置くのにふさわしい場所としては、オフィスもしくは、書斎といった、用途として“閉じられた”(限定された、と言い換えても良い)空間であるように思った。
我が家のように、オープンなリビングの一角に置こうという場合には、室内カラーなども含め、要注意である。
これだけ存在感のあるチェアを置いてしまうと、悪目立ちしかねない。チェアが主役の空間にしたいなら良いだろう。全体的にアンティークな雰囲気にもピッタリだと思う。
しかし、我が家は床も扉も白。ブラックではなくミネラルカラーを選べば良いのだろうが、今度は汚れが気になりそうだ。埃の溜まりそうなメッシュのこともあり、毎日の掃除を考えると、いま一歩踏み出すことはできなかった。
実際に購入しようか? という流れには全くならなかった。妻が、全く魅力を感じていない様子だったからだ。とにかくゴツいデザインが好きになれなかったらしい。
というわけで、触れてはみたけれど、憧れは憧れのままだった。これはこれで良かったのかもしれない。なんせ、憧れなのだから。
オカムラ・コンテッサ・セコンダ
上述したように、店頭でいろいろと試してみて、オカムラ・フィノラに心が傾いていたとき、またもや思わぬ伏兵が現れた。
オカムラのコンテッサ・セコンダである。
オカムラのコンテッサという椅子のことはもちろん知っていた。それがオカムラのフラグシップであることも。
しかし、20万円ほどもする。完全に予算外だし、それならばアーロンチェアの方が素敵だと思い込んでいたので、あまり深く情報を調べることもなかったのだ。
そんなコンテッサの最新作「コンテッサ・セコンダ」が店頭に置いてあった。
それを見つけたのは私ではなく、妻だった。
赤く塗られたデザインに目を引かれ、思わず座ってみたらしい。
「これ、すごく良いよ」と、私を呼ぶので、試しに座ってみると、確かに良い。
アーロンチェアなどより良いか? と聞かれたら、にわかには答えられないけれど、間違いなく座り心地は良い。
オカムラ・フィノラを、もっと洗練した操作系にも好感を持った。
アイコンなどによって操作がわかりやすいことはもちろん、普段よく使う操作は手元だけで完結できる。
中でも、右手の操作で座面の上下ができる(レバーを指で引き上げると、座面が上昇する。下げる場合は、レバーを引き上げた状態で腰を下ろして微調整する)ことは、複数人で使うことを考えると、非常に便利だと思った。
左手部分では、リクライニングのオン・オフが可能となっている。仕事と休憩のモード切り替えが左手の指先だけで完結するのだ。最初は、わざわざリクライニングをオフにする必要なんてあるのか? とも思ったが、作業中に動かない背もたれが腰に張り付いた状態になるということは、リクライニングする背もたれを気にして猫背になることを防いでくれるので、有用だということを日々実感している。
椅子の操作系といえば、座面の下にあるもの、という一般的な感覚を置き去りにする。これがめちゃくちゃ使いやすい。全てのオフィスチェアのスタンダードになっても良いくらい画期的なことである。
とは言え、手元で全て完結はしない。リクライニングの強度調整や、座面を前後移動するレバーは座面の下に設置されているが、こちらもまた、扱いやすい。
操作系にしっかり感はありながらも、重さはそこそこ。こういうのは、重いのはダメだとして軽くしすぎると、今度は安っぽさが顔を出すものだが、そうならないギリギリのところを狙っているように感じる。このあたりの調整の上手さは、アーロンチェアよりもハッキリ上である。
また、何より感心したのは、リクライニングの調整だ。
他のチェア同様、4段階で、そのリクライニングの反発力の強さを調整できるのだが、他と違うのは、極端さがないことだ。
当然、軽めの調整をすれば、軽い力で倒れるのだが、背中を預けた分だけ、背もたれが倒れる。そんな当たり前のこと、と感じるかもしれないが、座り比べてみれば、わかる。
意外とこういう地味なことができていない。他でガッカリしているだけに、そうそう、こういうのが欲しかった、と感動するレベルである。
そして、デザインもまた素晴らしい。
フィノラ同様、イタルデザインとオカムラによるコラボとなる。
背もたれを支える骨格部分は、よく見ると、かなりゴツいのだが、巧みな曲線で仕立てられているためか、あまりゴツくは見えない。とても優美で官能的なライン。むしろ、軽やかささえ感じる。
しかし、仕様にもよるが、その重量は最低でも12kg以上というのだから、決して軽くはない。我が家のように、フローリングの上で使用する場合には、間違いなく保護シートが必要である。
また、肘置きもかなり調整が可能だ。
調整代も大きく、体型を選ばず使えそうである。
仕様も、背もたれはメッシュだが、座面はメッシュとファブリックと革張りを選択できる上、カラーバリエーションも13色もある(革張りの場合は3色のみ)。
これには、メッシュが好きでないと言い張っていた妻も納得。聞けば、カラーリングによっては許容できるらしい。ただし、座面についてはファブリックであることが絶対条件だった。
そうして、私たち夫婦は購入を決めた。当初考えていた予算の倍ほどもするチェアを、ほとんど衝動的に、である。
ここで紹介した写真は全て、我が家で選んだモデルである。
カラーは「セージ」。フレームは「ポリッシュ」(他にシルバーとブラックが選択可能)。ボディは「ホワイト」(他にグレーとブラックが選択可能)。他にヘッドレストやランバーサポートなどは備えていない。
納品されてから1ヶ月ほど。
我が家のインテリアカラー(床も扉もホワイト)にはピッタリだし、ダイニングに置いても悪目立ちしない品の良さも最高である。
肝心の座り心地についても好印象は変わらない。
以前使っていたダイニングチェアでは、椅子の上であぐらを組むような座り方をしたり、なんとなく尻の座りが悪いようなところがあったけれど、今はきちんと座っているのが一番心地よいし、心なしか作業効率も上がった気がしている。
ちなみに今はオカムラの製品は8年保証となっている。
ハーマンミラーの12年には敵わないものの、十分以上の保証期間だと思う。
高い買い物ではあったけれど、いいもの買った感は高い。後悔は微塵もない。
購入を迷っている方がいらっしゃったら、「本当にいいよ」と自信を持って薦められる製品である。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。